加藤登紀子

 70年代には「知床旅情」、80年代には「百万本のバラ」、90年代にはジブリ・アニメ「紅の豚」挿入歌にもなった「さくらんぼの実る頃」−など、いつも印象深い曲を歌い続けてきた。気がつけば、デビューから40年をすぎ、ことしは42年目になる…。

 「私にとっては50歳以上の数字はないの。そう、今は歌手として42歳ですよ」


 こう言いながら笑ってみせるが、「私にとって30代は子育てが大変だったし、40−50代は体が変わっていく時で、それも大変でした。でも、50を越えると子供も大きくなったし、ラクになっちゃった。下り坂を下りている自分が山を登っているのを見ているような気分ですね」


 そうした意味から、「今の気分は、“仕込み”がやっと終わったシェフ、という感じがする。メロディーにも、言葉にもじっくり向き合えるんですよ。歌作りに自信がついた」という。


 「デビュー後、アイドルみたいな扱いをされ、(69年の)『ひとり寝の子守唄』がヒットしたら、“売れる曲を作れ”という声にとらわれて苦しみました。でも、結婚してから先は、生きていること自体が歌−と思えるようになりましたね。生みの苦しみがなくなって、楽しくなった。私にとって歌作りって、天から何かが降ってくるような奇跡ではない。段取りを踏んでやるものだと思います」


【もっと面白いものを】


 5月9日にリリースされる新アルバム「シャントゥーズII〜野ばらの夢〜」(ユニバーサル)では、「リリー・マルレーン」といったスタンダードナンバーから、藤井フミヤ提供の楽曲やゴスペラーズの村上てつやとのデュエットまであるかと思えば、「千の風になって」も歌う。


 「シャンソンにオリジナルをプラスするのが私にとって一番深いんですよ。今回は、それにポップな感じも与えています。フミヤ君の曲は思いがけなくしっとりした作品で、シャンソンの中に並べても据わりがいいですね」


 そうしたチャレンジを続けられるエネルギー源は、「何でも面白いって、思うことですね。曲を作るのも、ステージで歌うのも面白い。そして、“もっと面白いものを”と思うことでしょう」という。 自身のコンサート会場だけでなく、音楽や演劇など外に出かけて楽しむのは同世代の熟年女性が多い。


 「男の人は、大仕事を終えてどっと疲れるのに、女は子育ても終わってのびのびしている。エネルギーの使い方の違いなのかな。男が何を求め、感じ、悩むのか−そういうのも(歌の)ターゲットにしてみたい、と思います」


 2002年に死去した夫が残した、千葉・鴨川にある「鴨川自然王国」に今も足を運ぶ。


 「大事な場所を残してくれたと思います。二女のyae(八恵)は歌手生活5年になりますが、農場をやりながら歌う“半農半歌手”。一緒にいてもわくわくさせられます」


 4人の孫もいるが、永遠の「おときさん」に変わりはない。
| 音楽

×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。